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妻に浮気されたときは、妻や浮気相手に慰謝料を請求できます。ただし、離婚するか、請求相手を誰にするかなど、考えなければならない点は多いです。請求の前提として、証拠が手元に存在しなければなりません。
本記事では、不貞慰謝料を請求する際の注意点や相場を解説しています。妻に浮気されて慰謝料請求を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。
妻に浮気をされたと発覚したら?
妻の浮気が発覚した際には、動揺してどうすればいいか冷静に考えられないかもしれません。法律上は何ができるかを確認しておきましょう。
まず、不貞行為があれば、相手が拒否しても最終的には裁判で離婚できます(民法770条1号)。離婚の理由になる不貞行為とは、性的関係を持つことです。妻が浮気相手と性行為に及んでいれば、法律上離婚が可能です。ただし、財産分与や養育費で夫が金銭的に損をしたり、子の親権を妻に取られてしまったりするリスクもあるため、離婚するかどうかは慎重に検討する必要があります。
離婚する・しないにかかわらず、不貞は民法上の不法行為に該当するため、夫は精神的苦痛について慰謝料を請求できます(民法709条、710条)。請求相手になり得るのは、妻と浮気相手の両方です。両方に請求しても、一方だけにしても構いません。
まとめると、不貞行為に対して法律上できることは、妻との離婚と、妻や浮気相手への慰謝料請求です。浮気をされた側の男性は、いかなる選択をするかを考えなければなりません。
【参考】慰謝料請求と離婚のタイミング~どちらを先行させるべき?~
妻に浮気の慰謝料を請求するために必要なこと
浮気で慰謝料を請求するためには、証拠が不可欠です。不貞行為をした事実の証拠が十分にないと、裁判では勝訴できません。裁判前に交渉する際にも、証拠がないと見透かされれば慰謝料を支払ってもらうのは困難といえます。
慰謝料を請求するには、基本的には性行為があったとの証明が必要です。行為そのものを撮影した動画があれば決定的な証拠になるものの、ほとんどのケースで得られないでしょう。実際には、たとえば以下のものが有力な証拠になります。
- 妻と浮気相手が2人でホテルから出てきた瞬間をとらえた写真
- 性的関係に言及しているメール・LINE等のメッセージ
- 妻や浮気相手が不倫の事実を認めた音声や念書
- 興信所や探偵事務所が作成した調査報告書
手をつないでいる写真や、仲の良さがうかがえるメッセージのやり取りだけでは、性的関係を直接証明する証拠にはなりません。ただ、2人の親密さを裏付けられる意味はあります。手元に証拠があれば、残しておくようにしてください。
なお、証拠を得ようとして度が過ぎる行為には及ばないでください。相手の怒りを買うだけでなく、法に抵触するおそれもあります。脅迫して浮気を認めさせる、撮影のために勝手に私有地に侵入するといった行為はしないようにしましょう。
【参考】慰謝料請求のポイント9つ
妻に浮気・不倫の慰謝料を請求するときの注意点
妻に不貞慰謝料を請求する際には、以下の点に注意してください。
離婚すると夫に不利な条件になる場合が多い
離婚する際には、男性にとって不利な条件になりやすいです。
たとえば、財産分与で妻に多くの財産を分けなければならない可能性が高いです。夫が主な収入源であっても、婚姻期間中に得た財産は夫婦の協力によって築いたものと考えられます。基本的には半分ずつに分けるため、結果として夫から妻に財産を渡さざるを得なくなるケースが多いです。
また、子の親権も妻が獲得する場合がほとんどです。たとえ妻の不倫が離婚の原因であっても、どちらを親権者にするかを決める際にはさほど重視されません。妻が主に子育てを担っていて虐待等の問題がなければ、「妻を親権者とするのが子の利益になる」と判断されてしまいます。妻が親権を得れば、夫は養育費も支払わなければなりません。
他に年金分割もなされるなど、離婚時には金銭や子に関して夫に不利な条件となってしまいがちです。
たしかに、不貞を理由に離婚する場合には妻に慰謝料を請求できます。しかし後述する通り、慰謝料の相場は100~300万円程度です。結果的に、財産分与や養育費で支払う金額の方が大きくなる可能性が高いでしょう。不利な条件であっても離婚するのかどうかは、慎重に検討しなければなりません。
不倫前に夫婦関係が破綻していたら請求できない
不倫関係が始まる前に既に夫婦関係が破綻していた場合には、慰謝料は請求できません。平穏な夫婦生活を害されたとはいえず、民法上の不法行為が成立しないためです。
たとえば、既に別居していて離婚に向けた話し合いを進めていた段階で初めて不貞行為に及んだのであれば、慰謝料は発生しないと考えられます。
ただし、単に仲が悪かったという程度であれば、夫婦関係が破綻していたとまではいえません。また、夫婦間の性交渉がないというだけでも、破綻とは認められません。
このように、不貞行為があったタイミングで夫婦関係がいかなる状態であったかもポイントになります。
消滅時効にかかる前に請求する
たとえ不貞の事実があっても、消滅時効にかかれば慰謝料の支払いは受けられません。
慰謝料請求権は「損害及び加害者を知った時から3年」あるいは「行為の時から20年」が経過すると消滅時効にかかります(民法724条)。
浮気の事実を知ってから時が経つと、時効により慰謝料を請求できなくなるおそれがあります。時間をかけすぎないように注意してください。
離婚しないときは浮気相手に請求する
不貞慰謝料は、妻にも浮気相手にも請求できます。両方に請求しても、片方だけでも構いません。
ただし、離婚しない場合、妻から支払いを受けても家庭内でお金が動くだけですので、離婚しないケースでは浮気相手にだけ慰謝料を請求する場合が多いです。
【参考】慰謝料請求を受けた!7つのやってはいけないことや正しい対処方法について
浮気相手にも慰謝料を請求する場合
離婚する・しないにかかわらず、浮気相手に慰謝料を請求できます。ケース別に注意点を解説します。
離婚しない場合
離婚しないで浮気相手だけに請求する際には、妻への求償権を行使しないかに注意が必要です。
法律上、不貞の責任は妻と浮気相手とで共同で負います。夫に全額の支払いをした浮気相手は、妻に対して、妻が負うべき責任分の支払いを請求できます。これが求償権です。妻が浮気相手に求償権を行使されれば、家計からお金が流出してしまいます。
加えて、特に注意すべきなのがダブル不倫のケースです。
法律上、「浮気相手(男性)の妻」も被害者であり、あなたの妻に慰謝料を請求してくる可能性があります。双方が請求しあう形になると、家計全体でみれば意味がない場合が多いです。
離婚する場合
離婚する場合には、浮気相手だけに慰謝料を請求するケースと、両方に請求するケースが考えられます。
両方に請求するときでも、二重取りはできません。金額が2倍になるわけではない点は知っておきましょう。
いずれのケースでも、浮気相手から「既婚者だと知らなかった」「既に夫婦関係が破綻していると思っていた」などと反論される可能性があります。これが認められると、浮気相手には慰謝料を支払ってもらえません。「知っていた」「注意すればわかったはずだ」と根拠を示して再反論する必要があります。
【参考】慰謝料請求と離婚について
浮気の慰謝料の相場
不貞慰謝料には、おおよその相場があります。金額を大きく左右するのは、離婚に至ったか否かです。
離婚した場合には、おおむね100~300万円程度になります。まれに500万円以上の慰謝料が認められるケースもありますが例外的です。
具体的な金額は様々な要素により変動します。
- 婚姻期間
- 不貞前の夫婦関係
- 不貞行為の回数・期間
- 未成年の子の有無・年齢
- 発覚後の態度
- 妻の収入
離婚しない場合には、50万円から100万円程度です。婚姻関係は維持されているため損害が小さいと判断され、慰謝料額は低くなります。
個々のケースでどの程度の金額が想定されるかは、詳しい事情をお聞きしないとわかりません。弁護士にご相談ください。
当事務所の解決事例
当事務所では不貞慰謝料請求を取り扱っており、夫から妻への請求が認められたケースもございます。
【事案】
30代男性が、妻の不貞を理由に離婚し親権を取得した後、元妻と浮気相手に慰謝料を請求した。
【結果】
当初は相手方から「月額5万円×20回払いの総額100万円が限界」との回答があったものの、証拠(日記の内容を写した写真)を元に粘り強く交渉した結果、一括で190万円を獲得。
【ポイント】
親権について揉めるおそれがあったため、離婚が成立し親権を獲得した後に慰謝料を請求した。
このケースについて詳しくは、以下をご覧ください。
【参考】元妻とその不貞相手から190万円の慰謝料を取得したケース
当事務所は、群馬県内でも規模が大きい弁護士事務所のひとつです。群馬・高崎に密着して、地域の皆様から不貞慰謝料に関する数多くの相談を受けて参りました。相手方との交渉や訴訟をお任せいただければ、慰謝料の獲得はもちろん、やりとりや手続きに伴うストレスの軽減にもつながります。
不貞慰謝料に関する相談は無料です。妻の浮気が発覚してお悩みの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。