不倫は夫婦関係に大きな亀裂を生み出す行為です。

離婚前であっても、今すぐに不倫の慰謝料を請求したいとお考えの方は多いです。

 

今回は、

  • 離婚前の慰謝料を請求する際のポイント
  • 離婚前の慰謝料請求が認められる条件
  • 慰謝料請求の方法

をメインにご紹介します。

 

不倫の慰謝料を請求する際のポイント

電球を指差しているイメージ

まずは、不倫に対する慰謝料とはどういうものなのか、請求のポイントと合わせて説明します。

離婚していなくても請求できる

離婚する前の段階であっても、不倫の慰謝料を請求できます。離婚した後でなければ不倫の慰謝料を請求できないわけではありません。

不倫の慰謝料は、不倫により受けた精神的苦痛を慰謝するためのお金です。離婚せずとも精神的苦痛は発生しますから、離婚前であっても慰謝料の請求が可能です。

配偶者と不倫相手の両方に請求できる

不倫は一人ではできません。必ず不倫相手がいます。そのため、不倫は「共同不法行為」(配偶者と不倫相手の双方が責任を負う)となりますから、配偶者と不倫相手の双方に慰謝料を請求できます。

 

ここで注意しなければならないのが、双方に請求できるからといって慰謝料の金額自体が増えることはない、という点です。一方から慰謝料が満額支払われた場合、他方に対して慰謝料請求できなくなります。

 

例として、適正な慰謝料額が100万円のケースを想定します。

どちらか一方に100万円を請求できますし、両方に50万円ずつ請求もOKです。

一方から100万円が支払われた場合、他方に慰謝料を請求することはできなくなります。つまり、慰謝料を二重に取ることはできないのです。

 

離婚前においては、配偶者に対しては請求せず不倫相手にのみ請求するケースが多いです。

この場合、慰謝料全額(上の例では100万円)を支払った不倫相手には、配偶者に対し、配偶者も相応の慰謝料を負担するよう請求する(上の例では50万円)権利があります。この権利を求償権といいますが、配偶者に対し求償権の行使をされたくない場合は、“求償権を放棄する”などの約束を交わすこともありえます。

時効に注意

不倫の慰謝料請求権は、時効により消滅します。時効により消滅する条件は民法724条により下記2つが規定されています。

  1. 不貞行為&不貞相手を知ったときから3年
  2. 不貞行為から20年

 

1or2のどちらか早い期間が経過した時点で、慰謝料を請求する権利は時効により消滅してしまいます。

なお、時効にかかってしまった後でも、請求自体は可能です。相手が任意に支払に応じるのであれば慰謝料を得られます。とはいえ、消滅時効にかかった後で任意の支払を受けられるケースは稀です。消滅時効にかかった後は慰謝料を得られないと考え、予め慰謝料請求のための準備を整えておきましょう。

【参考】慰謝料請求訴訟の流れ

離婚前の慰謝料請求が認められる条件

電卓と丸のプラカード

不倫の慰謝料の請求根拠は「不法行為に基づく損害賠償請求権」(民法709条)です。ここでは、離婚前の慰謝料請求が認められるための法律的な条件を説明します。

「不法行為」の成立

法的に「不法行為」が成立するためには、「不貞行為」が必要です。

「不貞行為」の典型例は性交ですが、性交を行っておらずとも、「不貞行為」に該当する場合もあります。

一般的には、夫婦生活の平穏を侵害する程度に至れば「不貞行為」と判断されますが、どのような行為が「不貞行為」に該当するかは、最終的には具体的事案に応じてケースバイケースで判断するほかありません。

少なくとも、手をつなぐ、外出や食事をするといった程度では「不貞行為」とはなりません。

他方で、性交を行っておらずとも性交類似の行為を行っていれば「不貞行為」に該当する場合もあります。もっとも、性交そのものを行った場合よりも慰謝料額は低くなりやすいです。

【参考】慰謝料請求のポイント9つ

故意・過失

既婚者であることを知っていた(故意)or既婚者であることを知らなかったが注意すれば知ることができた(過失)ことも、慰謝料請求のための条件です。

 

例えば、配偶者が不倫相手に対し「自分は独身」と述べ、既婚者であることを窺わせるような事情(ex結婚指輪をはめている)も存在しない場合は、故意も過失も無いと判断され、不倫相手に対する慰謝料請求はできない可能性があります。

婚姻関係が破綻していない

前述のとおり、「不貞行為」=夫婦生活の平穏を侵害する行為です。

そのため、そもそも自分と配偶者との婚姻生活が破綻している場合、慰謝料の請求はできません。

例えば、配偶者との別居期間が長い、離婚することにつき夫婦で共通認識があるといった事情があると、婚姻関係が破綻しているとみられやすいです。

【参考】不倫相手からのよくある反論と解説

証拠集めが重要!

不倫の慰謝料を請求するためには、何よりも証拠が重要です。単に自分の考えを主張するのみでは、裁判になった際に慰謝料請求が認められることはなく、任意での支払を受けられる可能性も低いです。

 

有力な証拠としては次のようなものが考えられます。

  • ラブホテルに出入りしている写真
  • 家に出入りする写真
  • 性交等を行ったことが分かる配偶者と不倫相手間のやり取りの記録(exメール、LINE、SNS)
  • 性交等の写真や映像
  • 面識が有ることが分かる資料(ex職場が同じ、共通の知人である、結婚式に出席した)

慰謝料請求の方法

複数の案

最後に、慰謝料を請求するための方法・手順を説明します。

まずは協議

まずは、任意で支払を受けられないか、話合いを試みましょう。

話合いにより解決できれば、裁判等の法的手続をとるよりも費用や時間を削減できます。

もっとも、不倫という問題の性質上、当事者のみで話合いに臨むと感情的になってしまい話合いが前に進まなかったり、そもそも話合いのテーブルにつかないこともあります。弁護士などの第三者に依頼することで、スムーズに話合いを進められる可能性が高まります。

【参考】不倫相手からのよくある反論と解説

協議ができないならば調停

協議により解決しない場合、裁判所での「調停」を申し立てます。調停委員という第三者が間に入り、双方の言い分を吟味して妥当な解決案を模索する手続です。調停では、慰謝料の他にも、親権や財産分与なども検討することになります。

調停はあくまで裁判所での“話合い”なので、裁判に比べると柔軟な解決を実現しやすい点がメリットです。

 

なお、不倫相手にのみ慰謝料を請求するのであれば、調停を行わずにいきなり裁判を行うケースが多いです。

調停でも解決しないならば裁判

調停でも決着がつかない場合は、裁判を行います。

裁判では、訴状や答弁書の作成・証拠の準備といった作業を行います。これらは調停でも行う作業ですが、裁判ではさらに主張と証拠の重要性が高まりますから、法的に整理された主張を行い、それを裏付ける証拠をきちんと提出しなければ負けてしまいます。

白黒をはっきりさせられる点はメリットですが、だからこそ、専門的知識に基づいて適切な訴訟活動が要求されます。

【参考】民事裁判のメリット・デメリット、流れを解説

離婚前の慰謝料請求なら弁護士法人山本総合法律事務所へ

今回は、離婚前の慰謝料請求について、ポイント、条件や請求方法についてご説明しました。離婚前であっても慰謝料請求が可能であるものの、進め方によっては慰謝料の支払を受けられなかったり、低額の慰謝料しか受けとれないといったリスクもあります。また、自分で慰謝料を請求し、相手とのやり取りの窓口を務めること自体が大きなストレスとなります。

 

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