不倫相手に慰謝料請求をしても、さまざまな反論をされて慰謝料を払ってもらえないケースが少なくありません。

今回は不倫相手からのよくある反論パターンや対処方法、法的な考え方を弁護士が解説します。これから浮気の慰謝料請求をしたい方や相手から反論されてお困りの方はぜひ参考にしてみてください。

 

1.「性行為・肉体関係はなかった」という反論                     

浮気の慰謝料を請求すると「浮気していない」「性行為をしていない」と反論されるケースがよくあります。

 

実際に性行為がなかったら浮気の慰謝料を請求できなくなる可能性があるので、法的な考え方を確認しましょう。

 

法律上の不倫を意味する「不貞」が成立するには「配偶者と不貞相手との肉体関係(性関係)として」が必要と考えられています。親しく交際していても、肉体関係がなかったら不貞は成立しません。肉体関係は、慰謝料が認められるために必要な条件といえるでしょう。本当に性関係がないなら、慰謝料請求できなくなる可能性があります。                

 

ただし相手が嘘をついているケースもよくあります。相手による虚偽主張に引きずられないために、慰謝料請求前に「肉体関係を証明できる証拠」を集めておくべきです。

 

なお実際に性行為がない場合でも、一定の場合には慰謝料請求できる可能性があります。それは、配偶者と不倫相手があまりに親しく交際して夫婦が平穏に生活する権利を侵害した場合です。社会常識で許される範囲を超えて既婚者と親しく交際すると、慰謝料が発生するのです。ただしこの場合の慰謝料額の相場は50万円以下となり、性行為がある場合と比べて大幅に下がります。

 

「性行為・肉体関係はなかった」という相談についてはこちら

 

2.「既婚者であると知らなかった」という反論

不倫相手から「既婚者とは知らなかった」という反論を受けるケースもよくあります。

既婚者とは知らなかった場合、不法行為の成立要件である「故意」がありません。不法行為が成立しなければ慰謝料は発生しないので、本当に相手が既婚者と知らなければ慰謝料請求できない可能性があります。

 

ただし既婚者と知らなかったとしても「不注意によって気づかなかった」のであれば「過失」が認められます。故意がなくても過失があれば不法行為が成立するので、慰謝料請求は可能です。

 

また相手が「既婚者と知らなかった」と主張しても、嘘をついているケースが少なくありません。

 

「既婚者である事実を知らなかった」と言われたら、相手の立場として「当然既婚者と気づくべき状況」がなかったか検討しましょう。通常の注意を払えば既婚者と気づく状況であれば、過失が認められます。その場合、慰謝料請求が可能となります。                             

 

「既婚者と知らなかった」という弁解が通用するのは、婚活パーティで知り合い「独身です」と積極的に説明した場合などの極端な事例に限られてくるのが実情です。

 

「既婚者であると知らなかった」ら慰謝料は払わなくて良い?証拠集めの方法も弁護士が解説

 

3.「すでに夫婦関係が壊れていた」という反論                     

不倫の慰謝料請求をすると「不倫を開始したときにすでに夫婦関係が破綻していた」と反論されるケースもよくあります。

本当に不倫開始時に夫婦関係が破綻していたら、慰謝料は発生しません。すでに夫婦関係が壊れているなら、不倫があっても配偶者は精神的苦痛を受けないと考えられるためです。

 

ただし不倫相手が勝手に「破綻していた」と思い込んだだけで実際には破綻していないケースも多々あります。その場合には慰謝料請求が可能です。

 

また「夫婦関係の悪化」と「破綻」は異なります。たとえば不倫が開始したときにすでに夫婦が別居していたら、通常夫婦関係の破綻が認められます。

一方で、同居しながら関わりを減少させる「家庭内別居」の場合などには慰謝料は減額されても0円にはなりません。まして家庭内別居でもなく、単に「離婚しようかどうか迷っている」だけの状態などであれば、慰謝料は通常通りに発生するものと考えましょう。

 

「夫婦関係が破綻していた」という反論は通用しないケースも多いので、過度に引きずられないように注意しましょう。

 

「すでに夫婦関係が壊れていた」のに慰謝料請求された方へ

 

4.「すでに時効である」という反論                            

慰謝料請求権には「時効」が適用されます。

慰謝料請求権の時効期間は、基本的に以下のとおりです。

 

  • 不貞の事実と不貞相手を知ってから3年間
  • 不貞があってから20年間

 

不貞の事実だけではなく「不貞相手」も知ってから3年の経過を要するので、単に「不倫から3年が経過しただけ」では時効は成立しません。

不倫相手の特定に時間がかかったケースなどでは、不倫が行われてから長期間が経過しても慰謝料請求できる可能性があります。

 

不倫相手が勘違いをして早めに「時効が成立した」と言ってくるケースもよくあるので、間違えないように正しく時効期間を計算しましょう。

 

不倫慰謝料で消滅時効が成立するケースについてはこちら

 

5.「誘われたから応じた」という反論

不倫相手から「自分としては積極的ではなかったけれど、相手から誘われたのでやむなく不倫に応じた」と主張されるケースもよくあります。

しかし自分が積極的でなかったにせよ、不倫は違法行為です。相手から誘われたとしても慰謝料は発生します。相手が「誘われただけなので自分は悪くない」と主張しても慰謝料請求できると考えましょう。金額についても、配偶者と不倫相手の関係は「連帯責任」になるので、基本的に全額請求できます。

 

ただし配偶者と不倫相手との間の「責任割合」を検討する際には不倫相手の負担割合が小さくなる可能性があります。いずれにせよ、責任割合の問題は慰謝料の請求者(不倫の被害者)にとっては無関係な事情なので、不倫相手に全額請求すると良いでしょう。

 

6.「性行為を強要された」という反論                        

不倫相手から「肉体関係を強要されたので、自分に責任はない」と反論されるケースもよくあります。

不貞行為によって不法行為が成立するには故意や過失が必要なので、本当に強要されて拒絶する余地がなかったのであれば慰謝料は発生しません。たとえば配偶者が不倫相手を強姦した場合などには、不倫でないことが明らかです。

 

ただし不倫相手が「強要された」と主張していても、実際には強要でないケースが多々あります。たとえば配偶者が強めに誘っただけでも「強要」と表現する人はいます。もちろんそれでは強要とはいえないでしょう。

上司(配偶者)が部下(不倫相手)を誘ったときに部下が断れなかった場合なども考えられますが、断る余地があれば強要ではありません。また浮気の回数を重ねてお互いに合意が芽生え「強要」ではなくなったら、結局は通常の不貞行為なので慰謝料請求できます。

 

 

 

不倫相手から「慰謝料を払わない」と反論されても、実際には慰謝料請求できるケースが多々あります。対処方法に迷われたときには、お気軽に群馬の山本総合法律事務所までご相談ください。