「不倫慰謝料を請求されたのですが、不倫が始まった頃にはすでに夫婦関係が破綻していたのです。慰謝料を払う義務はありますか?」

 

といったご相談を受けるケースがよくあります。

不倫が始まった当初の段階から夫婦関係が破綻していたなら、慰謝料を払う必要はありません。

以下ではどういったケースで夫婦関係の破綻が認められるのか、例をあげて解説します。

 

 

1.夫婦関係の破綻と不倫慰謝料の関係

夫婦関係の破綻とは、夫婦関係が壊れてしまって修復できない状態になっていることです。

不倫が始まった当初から夫婦関係が破綻していると、不倫慰謝料は発生しません。なぜならその場合「不倫によって婚姻関係が破綻した」といえないからです。

 

不倫によって婚姻関係が破綻したのでないなら、配偶者が受ける精神的苦痛は不倫とは関係ないことになります。

またすでに婚姻関係が破綻している相手が不倫しても、配偶者はさして大きな精神的苦痛を受けないはずです。

 

よって不法行為における因果関係や損害の要件を満たさないので、夫婦関係が当初から破綻している場合には不倫をしても慰謝料が発生しません。

 

不倫慰謝料を請求されても支払いを断ることができます。

 

2.婚姻関係の破綻が認められる場合       

以下のような場合、婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。

2-1.長期間の別居

夫婦が長期に渡って別居している場合、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高くなります。

長期間別居してお互いに交流していない場合、もはや夫婦としてやり直すのは困難になるからです。

別居によって婚姻関係の破綻が認められるのは、別居期間がおよそ5年以上になっている場合です。ただし一方が有責配偶者で有責配偶者が離婚を請求する場合には10年程度の別居期間が必要になります。

 

不倫が始まった当初から相手方夫婦が別居していたケースでは、婚姻関係の破綻を主張して慰謝料を拒否すると良いでしょう。

 

単身赴任や介護のための別居の場合

単身赴任や親の介護のための別居のケースでは、別居していても婚姻関係の破綻になりません。夫婦関係が壊れて別居しているのではないからです。

不倫が始まったとき、相手が単身赴任していたからといって慰謝料支払義務がなくなるわけではないので、間違えないよう注意が必要です。

 

家庭内別居の場合

同じ別居でも実際の別居と家庭内別居は異なります。家庭内別居の場合、夫婦間で交流が残っているケースも多く、完全な婚姻関係破綻とは認められない可能性が高くなります。

不倫した当初に「相手方夫婦が家庭内別居していた」と主張しても、慰謝料が0円になるとは限りません。ただし夫婦関係が悪化していたら慰謝料減額事由にはなるでしょう。

 

2-2.DV・モラハラ

DVやモラハラの程度がひどいと、婚姻関係が破綻しているとみなされる可能性があります。

ここでいうDVとは身体的の暴力、モラハラとは精神的な攻撃をいいます。

 

不倫が始まった当初の段階から交際相手が配偶者からひどいDVやモラハラを受けていた場合、慰謝料を払わなくて済む可能性があります。

 

ただしDVやモラハラによって婚姻関係が破綻していたことを立証するのは簡単ではありません。またDVやモラハラがあったからといって慰謝料が0円になるとは限りません。

多くの場合には慰謝料の減額事由にはなっても一定の慰謝料を払う必要があるでしょう。具体的にどの程度の慰謝料が必要かについては個別に弁護士に相談しましょう。

 

弁護士に依頼した場合のメリット・デメリットはこちら

 

2-3.生活費を払わない、浪費

一家の大黒柱であるにもかかわらず生活費を払わない場合や浪費がひどい場合には、婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。

ただ浪費があるからといって必ずしも婚姻関係が破綻しているといえるわけではありません。浪費によって生活費までが使い込まれて夫婦の生活が困窮し、改善の見込みが無いようなケースでは婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。

 

2-4.家庭生活の放棄

配偶者が家庭生活を放棄した場合にも婚姻関係が破綻しているとみなされる可能性があります。たとえば一方配偶者が宗教や政治活動などにのめり込んで毎日、夜中にも帰ってこなくなり夫婦や家族の生活を放棄した場合などです。

2-5.性生活の不一致

夫婦の性生活、性嗜好があまりに一致しない場合には夫婦関係の破綻が認められる可能性があります。たとえば若い夫婦で健康なのに正当な理由なく性関係を拒否する場合、異常な性に関する性癖を相手に押し付ける場合などです。

 

ただ性生活の不一致を不倫相手が証明するのは簡単ではありません。証拠集めには配偶者による協力が必須となるでしょう。

 

3.婚姻関係の破綻が認められない場合

以下のような場合には、婚姻関係破綻までは認められないケースが多数です。

3-1.犯罪行為

夫婦の一方が犯罪行為をしたり服役したりしたからといって、婚姻関係が破綻したとみなされるわけではありません。

ただし服役を繰り返している場合や今後の更生の可能性が低いと考えられる場合などには、他の事情も考慮したうえで婚姻関係が破綻しているとみなされる可能性があります。

 

3-2.相手の実家との不和

相手の実家と不和になっていても、それだけでは婚姻関係の破綻は認められません。

実家と仲が悪くても夫婦関係自体は悪化していないケースもよくあるからです。

ただし配偶者も実家側に加担して実家と一緒に配偶者を攻撃するようなケースでは夫婦関係自体が悪化しているといえ、婚姻関係破綻が認められる可能性があります。

 

なお実家との不和によって婚姻関係が破綻していると主張する場合、立証方法も困難になりがちです。その意味では完全に慰謝料が0になるケースは少ないでしょう。

 

3-3.相手から「離婚する予定」「妻とはうまくいっていない」と言われていた

不倫が始まった当初の段階で、不倫相手から「妻(夫)とは離婚する予定」「妻(夫)とはうまくいっていない」と聞かされるケースはよくあります。

しかしこういった言葉を聞かされていたからといって、実際に夫婦関係が破綻していたとは限りません。また不倫する人はこういった言葉をかけて不倫相手の気を引こうとするものなので、その言葉を信じたからといって故意がなくなるわけでもありません。

「離婚する予定」などと聞いていても慰謝料は発生する可能性が高いので、こういった主張は慎重に行う必要があります。

 

3-4.不倫してから婚姻関係が破綻した

婚姻関係破綻によって慰謝料が発生しないようにするには、「不倫が始まった当初の段階」で婚姻関係が破綻していなければなりません。

そうではなく「不倫してから婚姻関係が破綻した場合」には慰謝料は発生します。婚姻関係破綻を理由に慰謝料を断りたい場合、婚姻関係破綻や不倫のタイミングが重要なので、間違えないように注意しましょう、

 

慰謝料請求訴訟の流れ

 

群馬の山本総合法律事務所では不倫の慰謝料請求案件に力を入れて取り組んでいます。慰謝料請求をされてお困りの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。