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「性交渉を強要されたのに奥さんから慰謝料を請求されました。慰謝料は払わないといけないのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがあります。
結論的に、性交渉を強要されたのであれば慰謝料を払う必要はありません。
反対にこちらから相手へ慰謝料を請求できる可能性もあります。
この記事では性行為について合意がなかった場合の不倫慰謝料やこちらからの慰謝料請求についてご説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.不倫慰謝料が発生するには合意が必要
一般的に「配偶者のある人と不倫したら慰謝料が発生する」と理解されています。
しかし配偶者のある人と性交渉をしたとしても、自由意思にもとづかなければ慰謝料は発生しません。行為者には不法行為の成立に必要な「故意」や「過失」がないからです。
合意していないのに無理に性行為をさせられた場合、相手の配偶者から慰謝料を請求されても支払う必要がありません。
2.合意がなかったらこちらから慰謝料を請求できる
性交渉を強要された場合には、こちらから加害者へ慰謝料を請求できます。
合意なしに性交渉を強要する行為は「強制性交等罪」になる強度な違法行為だからです。
強制性交等罪とは、暴行や脅迫によって無理に相手に性行為や性交類似行為を強要する犯罪です。
2-1.強制性交等罪の刑罰
強制性交等罪の刑罰は「5年以上の懲役刑」となっており、非常に重くなっています。
また性交渉を強要されたときに傷を負わされると、相手には強制性交等致傷罪が成立し、無期懲役又は6年以上の有期懲役の刑が適用されます。
2-2.相手から性行為を強要された場合の慰謝料
相手から性行為を強要されたとき、強制性交等罪が成立するほどの悪質な事案であれば、慰謝料は100~500万円程度となります。ときにはそれ以上の慰謝料が認められるケースもあります。
以上をまとめると、こちらが強制性交等罪の被害者となった場合、こちらから加害者本人に100~500万円程度の慰謝料を請求できるのであり、こちらが慰謝料を払う必要はありません。
2-3.慰謝料が高額になる場合
強制性交等罪の慰謝料が高額になりやすいのは、以下のような事情がある場合です。
- 暴行や脅迫の内容が悪質
- 被害者の年齢が低い
- 犯行が計画的だった
- 犯行態様が執拗だった
- 同じ相手に何度も犯行が繰り返された
- 被害者側に過失がない、過失が低い
性行為を強要されたら、上記にあてはまる要素がないか検討してみてください。
3.性行為を強要されたのに慰謝料を請求された場合の対処方法
もしも性行為を強要されたのに相手の配偶者から慰謝料を請求されたらどのように対応すれば良いのでしょうか?以下で対処方法をご説明します。
3-1.相手に事情を話して理解してもらう
まずは請求者(相手)に事情を話して理解してもらいましょう。
- 性行為は強要されたのであってこちらも望んでいなかったこと
- こちらはむしろ被害者であること
こういった事情が伝われば、相手も慰謝料請求をとりやめる可能性が高くなります。
3-2.加害者を刑事告訴する
次に加害者を刑事告訴しましょう。
強制性交等罪は親告罪ではないので、刑事告訴がなくても相手は処罰されます。それでも告訴状が出ている方が刑罰を重くしてもらえる可能性が高くなるからです。
相手を「許せない」という気持ちが強いなら、警察署へ告訴状を提出して刑事告訴するようおすすめします。
なお被害届を提出するだけでも捜査は開始してもらえます。
3-3.加害者へ慰謝料請求する
さらに加害者へ慰謝料を請求しましょう。
性行為の強要は重大な人格権の侵害であり、決して許される行為ではありません。
権利を侵害された被害者には相手に対して慰謝料請求権が認められます。
慰謝料の金額の相場は100~500万円程度でケースによって異なります。自分で妥当な慰謝料額がわからない場合には弁護士に相談しましょう。
慰謝料を請求するときには、内容証明郵便で慰謝料の請求書を送るようおすすめします。内容証明郵便を利用すると「請求した証拠」を残せますし、相手に強いプレッシャーを与えることも可能となります。弁護士に内容証明郵便の作成や発送、交渉などを依頼できます。
3-4.交渉して慰謝料を払ってもらう
加害者へ慰謝料請求をしたら、相手と交渉して慰謝料の金額や支払い方法を決めましょう。
条件が決定したら「慰謝料支払いに関する合意書」を作成し、慰謝料を払ってもらいます。
3-5.話ができないときは弁護士へ相談する
性行為を強要された場合、自分で相手と交渉するのが厳しいという方も多いでしょう。
その場合には弁護士へ相談するようおすすめします。弁護士には慰謝料請求の代理交渉を任せることができます。
弁護士に依頼すれば自分で加害者と話さなくて良いので精神的な負担も大きく抑えられます。弁護士は交渉のプロなので、有利に交渉を進められる可能性も高くなります。
自分で話し合うよりも納得できる結果を得られる可能性が高いので、男女問題や刑事事件の被害者支援に力を入れている弁護士に話を聞いてもらいましょう。
4.強要された場合も慰謝料支払義務が発生する場合
性行為を強要された場合には、基本的にこちらに慰謝料支払義務が発生しません。ただし以下のような場合には慰謝料が発生する可能性があります。
以下で「性行為を強要されても慰謝料支払義務が発生する可能性のある場合」をご紹介しますので、注意してご覧ください。
4-1.強制が完全ではなかったとき
性行為を強要されたとはいえ、強制が完全ではないケースはよくあります。
たとえば相手から「強く誘われた」程度であり、暴行も脅迫もされておらず断ろうと思えば十分に断れた場合などです。
相手から少々強めにホテルに誘われた場合などが該当するでしょう。
こういったケースでは完全に「強要された」とは言い切れず、こちらの自由意思もあって性行為に及んだと理解される可能性があります。そうなるといくらかの慰謝料は払わねばなりません。
4-2.当初は強制されても途中から任意になったとき
当初に関係を持ったときには望まない性行為を強要されたとしても、だんだんと男女の関係になっていくケースがあります。
たとえば当初はセクハラなどで望まない関係だったとしても、いつしか通常の男女交際に発展するケースなどです。
そういった場合には、当初は慰謝料が発生しないとしても後に自由意思によって性行為に及んだ時点で慰謝料が発生します。
5.性行為を強要されたとき、弁護士に依頼する必要性について
性行為を強要されたにもかかわらず慰謝料請求された場合には、自分で対応するのが困難になりがちです。弁護士に依頼する必要性が高いので、以下でその理由を解説します。
5-1.請求者を納得させるのが難しい
1つは請求者を納得させるのが難しい問題があります。
相手(請求者)は「夫が不倫した」と思いこんでおり、強要したとは夢にも思っていないケースがほとんどだからです。
こちらがいくら「性行為を強要された」といっても聞く耳を持ってもらえない可能性があります。その場合、中立的な専門家である弁護士が間に入って相手を説得する必要があります。
5-2.精神的な負担が大きい
2つ目に被害者の精神的負担が大きい問題があげられます。
強制性交等罪の被害者となった場合、外に出るのも人と話すのも怖くなってしまう方が多数おられます。そんな中で相手と示談交渉を自分で進めるのは非現実的でしょう。
弁護士に代理交渉を依頼する必要性が高まります。精神的負担を少しでも小さくするために弁護士へ依頼しましょう。
5-3.刑事事件にも対応する必要がある
強制性交等罪の被害者となり、その事件が刑事事件になったら、被害者は刑事事件にも対応しなければなりません。民事事件と刑事事件の両方に対応しなければならないので、負担が大きくなってしまいます。民事と刑事の両面から弁護士にサポートしてもらえると、かかる負担が小さくなって対応しやすくなるでしょう。
群馬の山本総合法律事務所では男女問題や刑事事件に力を入れて取り組んでいます。性行為を強要されたにもかかわらず慰謝料を請求されてお困りの方がおられましたら、お早めにご相談ください。