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「慰謝料を払えないので自己破産しようと思っています。その場合でも相手から慰謝料を請求されてしまうのでしょうか?」
といったお悩みをお伺いするケースが少なくありません。
一般的な不貞(不倫)の慰謝料は自己破産によって免責されます。
自己破産したら、その前に行った不倫による慰謝料を払う必要はありません。
この記事では自己破産すると慰謝料がどうなるのか、ご説明します。
不倫慰謝料を払えない方やその他の借金などがあって自己破産を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.自己破産とは
自己破産とは、裁判所へ申立をして借金などの負債をほとんどすべて免除してもらう手続きです。
自己破産で「免責(めんせき)」が認められると、ほとんどの債務の支払いが免除されます。
たとえば以下のような債務は払う必要がなくなります。
- カードローン
- キャッシング
- クレジットカードの負債
- 車のローン
- 事業用ローン
- 未払い家賃
- 知人や親戚からの借り入れ
- 未払い通信料、スマホ代
- 未払いの水道光熱費(ただし下水道代金を除く)
- 奨学金
- 連帯保証債務
- 一般的な相続債務
上記のような負債があって支払えない場合、自己破産は非常に有効な対処方法といえるでしょう。
2.非免責債権とは
ただし自己破産をしても、すべての負債が免除されるとは限りません。
「非免責債権(ひめんせきさいけん)」とよばれる負債は免除されないからです。
非免責債権とは、自己破産で免責許可決定が出ても残ってしまう負債です。
具体的には以下のようなものが非免責債権となります。
- 税金、健康保険料、年金保険料
- 罰金
- 養育費、婚姻費用
- 故意又は重過失で与えた身体や生命に対する不法行為にもとづく損害賠償請求権
- 悪意にもとづく不法行為にもとづく損害賠償請求権
- 債務者があえて債権者名簿に記載しなかった債権
- 個人事業主が支払うべき従業員への給料
慰謝料は損害賠償請求権の一種なので、④や⑤に該当する可能性があります。
その場合、非免責債権となって免責されません。
2-1.「悪意にもとづく」といえるか
不倫の慰謝料は、通常「身体や生命」に向けたものではありません。そこで④にはならず、⑤に該当するかどうかが問題になります。
すなわち不倫が「悪意にもとづく不法行為」となるかによって慰謝料が免責されるかどうかが決まります。
通常の不倫は悪意にもとづかない
「悪意」とは、あえて相手を傷つけてやろうという強い害意を意味します。
一般的に不倫を行う場合、相手の配偶者をあえて傷つけてやろうという意図を持つわけではありません。そこで悪意は認められないのが通常です。
一般的な不倫の慰謝料は「悪意にもとづく」とはいえず、非免責債権になりません。
2-2.免責されるのは破産手続開始決定前の慰謝料
自己破産によって免責されるのは「破産手続開始前に発生した債権」に限られます。
破産手続き決定後の債務は免責の対象になりません。
よって自己破産前の不倫慰謝料は免責されますが、自己破産後も不倫関係を続けていた場合には、相手から慰謝料請求される可能性があります。
慰謝料などを支払えなくて自己破産するなら、不倫相手との関係は断ち切りましょう。
3.免責されない不倫の慰謝料
不倫の慰謝料が免責されない場合もあります。
以下でどういったケースで免責の対象にならないのかみていきましょう。
3-1.暴力を伴うケース
一般的な不倫の慰謝料は、身体や生命に向けた不法行為に基づくものではありません。
よって「悪意」があるかどうかが問題になり、悪意がなかったら免責されます。
ただし暴力が振るわれた場合には、「身体や生命に向けた不法行為」となるので要件が変わります。
この場合、「故意又は重過失」があれば非免責債権となります。
通常、暴力を振るう場合には「故意(わざと)」があるといえるでしょう。よって、不倫しただけではなく相手に暴力を振るうと、その損害賠償請求権は自己破産をしても免責されない可能性が高くなります。
たとえば以下のような場合です。
- 不倫したとき、悔しいので交際相手の配偶者に暴力を振るったことがある
- 不倫だけではなく配偶者へ暴力を振るっていた(DVと不倫で離婚するケースの離婚慰謝料)
特に不倫が原因で離婚する場合、DVもあった場合にはその離婚慰謝料は自己破産しても免責されない可能性が高いと考えましょう。
3-2.破産後も交際を続けたケース
破産によって免責されるのは、破産手続開始決定前の負債のみです。
破産手続開始決定後の負債は自己破産によっても免責されません。
破産後も交際を続けていると、相手から慰謝料を請求される可能性があります。
4.非免責債権が請求されたときの対処方法
不倫の慰謝料が無事に免責されて相手が請求できなくなったとしても、相手が納得するとは限りません。自己破産手続き中や自己破産の手続き後に請求してくる可能性があります。
請求されたらどのように対処すれば良いのかみてみましょう。
4-1.自己破産手続き中に請求された場合
相手が自己破産の手続き中に不倫慰謝料を請求してきても、払ってはなりません。
自己破産では、すべての債権を平等に取り扱わねばならないとする「債権者平等の原則」がはたらくからです。
一定の負債だけ優遇して支払うとルール違反となり、「免責不許可事由」になってしまいます。そうなると、不倫慰謝料だけではなくすべての負債を免除してもらえないリスクが発生します。
破産手続き中に相手から支払い請求されても、はっきり支払いを断りましょう。しつこいようなら弁護士に対応を依頼するようおすすめします。場合によっては相手の行為が脅迫や恐喝になる可能性もあるので、早めに厳正な対処をしましょう。
4-2.自己破産手続き後に請求された場合
自己破産後に相手から請求された場合には、非免責債権だったかどうかで対応が異なります。一般的な不倫慰謝料のように非免責債権であれば、支払いを断りましょう。
ただその場合、相手が納得せずに訴訟を起こしてくる可能性があります。
訴訟を起こされると、その中で「慰謝料は非免責債権か」が審理され最終的に裁判所によって判断されます。
裁判所が判決で「非免責債権にあたらない」と判断すると、慰謝料は免責されたことが確定します。相手はそれ以上慰謝料を請求できません。
裁判で「非免責債権にあたらない」と判断してもらうには、慰謝料の発生原因や内容など詳細に説明し、「悪意にもとづく不法行為にもとづく損害賠償請求権」ではないことを証明しなければなりません。訴訟活動が不十分な場合、非免責債権に該当すると判断されてしまう可能性があります。そうなると相手から慰謝料を請求されてしまうでしょう。
訴訟で適切に対応するには弁護士によるサポートが必須です。困ったときには男女問題や債務整理に詳しい弁護士に相談しましょう。
群馬県の山本総合法律事務所では不倫や借金のトラブル解決に積極的に取り組んでいます。
慰謝料を払えなくてお困りの方はお早めにご相談ください。