夫や妻に不倫されても、あえて夫や妻本人には慰謝料請求しない方が少なくありません。

たとえば配偶者と離婚せずに夫婦関係を継続する場合には不倫相手にのみ請求するケースが多いでしょう。

配偶者に慰謝料請求しない場合ならではのメリットもあるので、不倫相手と配偶者の両方に慰謝料請求する場合との違いを押さえておきましょう。

 

今回は配偶者に慰謝料請求をしない場合のメリットや注意点をお知らせします。夫や妻に不倫されて慰謝料を請求したい方はぜひ参考にしてください。

 

1.配偶者に慰謝料請求をしない場合とは

不倫されたら、不倫相手と配偶者の両方へ慰謝料を請求できます。

ただ必ず両方へ請求しないといけないわけではありません。どちらか一方に請求することももちろん可能です。

 

よくあるのが、不倫相手にのみ慰謝料を請求し、配偶者へは慰謝料請求しないパターンです。

以下のような場合に不倫相手だけに対する慰謝料請求を選択する例が多数となっています。

  • 配偶者と離婚せず夫婦関係を継続する(復縁する)
  • 不倫相手と配偶者を別れさせたい
  • 配偶者との関係を悪化させたくない
  • 配偶者との離婚はいったんペンディングにして、とり急ぎ不倫相手にのみ慰謝料を払ってもらいたい
  • 配偶者には資力がないが、不倫相手の収入や資産が多く支払いを受けやすい

 

上記のような状況であれば、不倫相手のみに対する慰謝料請求を検討しましょう。

 

交際相手(配偶者)への慰謝料請求が免除された場合の影響

 

2.配偶者に慰謝料請求をしない場合のメリット        

配偶者へ慰謝料請求せず不倫相手のみに慰謝料を請求する場合、以下のようなメリットがあります。

2-1.配偶者が慰謝料請求に協力する可能性がある

1つは配偶者が慰謝料請求に協力する可能性があることです。

たとえば不倫がいつからいつまで行われていたのか、どういった態様で不倫していたのかなど、配偶者の協力を得られれば詳細な情報を入手できます。

つまり不倫相手にのみ慰謝料請求する場合、配偶者が慰謝料請求に協力するので不倫の事実や実態を把握しやすくなるなどのメリットがあります。

 

2-2.不倫相手の情報を把握しやすい

自分ひとりで不倫相手への慰謝料請求を進めようとしても、不倫相手がどこの誰かわからないケースが少なくありません。その場合、探偵に調査を依頼したり弁護士に情報照会を依頼したりして、相手を特定する必要があります。そうなるとよけいな労力や費用がかかってしまうでしょう。

慰謝料請求の相手を不倫相手のみとして配偶者の協力を得られれば、配偶者から不倫相手に関する詳細な情報を聞き出せます。

職場の女性なのか友人なのか出会い系アプリで出会ったのか、住所、氏名や電話番号なども確認できるでしょう。結果的に慰謝料請求を進めやすくなり、大きなメリットを得られます。

 

2-3.不倫の証拠を入手できる

不倫の慰謝料請求をするときには、証拠が必要です。不貞を証明するには基本的に「肉体関係がわかる証拠」を入手しなければなりません。しかしひとりで慰謝料請求を進める場合、配偶者と不倫相手の肉体関係を示す証拠を入手するのは簡単ではありません。

 

配偶者が慰謝料請求に協力する場合には、配偶者に「自認書」を書かせたり録音データを撮ったりできます。

たとえば「2021年○月から2022年○月頃まで○○○○さんと不貞関係となり、肉体関係を持っていました。」などと書かせて自認書を作成すると、肉体関係の明確な証拠となるでしょう。

 

配偶者へ慰謝料請求せず不倫相手にのみ慰謝料請求する場合、不貞(配偶者と不倫相手の肉体関係)を証明しやすくなるメリットもあるといえます。

 

3.夫や妻に慰謝料請求しない場合の注意点

夫や妻に慰謝料請求しない場合には注意点もあるので、以下でみてみましょう。

3-1.慰謝料が低くなる可能性がある

不倫されても配偶者と離婚しない場合や夫婦関係が破綻しなかった場合、慰謝料の金額は破綻した事例より低くなります。

夫婦関係が破綻した場合の慰謝料相場は100~300万円程度ですが、破綻しなかった場合の慰謝料額は100万円以下になるのが一般的です。

 

相手からも「夫婦が離婚しないなら高額な慰謝料は払えない」といわれる可能性があるので、適切な反論を考えなければなりません。示談には慎重に対応しましょう。

 

3-2.接触禁止条項を入れる

配偶者と離婚せずに不倫相手にのみ慰謝料請求する場合、示談書を作成する際に「接触禁止条項」を入れるようおすすめします。

接触禁止条項とは、不倫相手と配偶者が接触しないことを約束させる条項です。面談だけではなく電話やメール、SNSやLINEなどのすべてのやり取りを禁じます。このことで、不倫の再発を防ぎやすくなるメリットがあります。

 

また接触禁止条項をより実行的にするため「違約金」についても定めておくとよいでしょう。違約金とは、約束を破ったときに払わねばならない損害賠償金です。違約金条項があると相手に強いプレッシャーがかかるので、接触禁止の約束が守られやすくなる効果もあります。

 

不倫の示談における附帯条件について

 

3-3.慰謝料には時効がある

不倫相手に慰謝料請求しようか、誰に請求すべきかなど迷っていると、なかなか慰謝料請求を実行に移せない方が多数です。

しかし不倫の慰謝料請求権には時効があります。3年以上迷っていると慰謝料を請求できなくなってしまうおそれがあるので、早めに請求しましょう。

 

群馬の山本総合法律事務所では不倫慰謝料請求の法的サポートに力を入れて取り組んでいます。夫や妻に不倫されたけれども離婚しようか迷われている方、不倫相手にのみ慰謝料請求したい方はお気軽にご相談ください。

 

不倫慰謝料で消滅時効が成立するケースとは?