裁判外交渉のメリット・デメリット
目次
不倫の慰謝料請求をする方法としては、主に「裁判外の交渉」と「民事裁判」の2種類があります。
裁判外の交渉は、いわゆる示談交渉です。
慰謝料請求するときには、まずは裁判外の交渉を行い、決裂したら裁判を起こすという流れが一般的です。
ただ「示談交渉と裁判のどちらが効果的なのだろう?」と迷ってしまう場面も少なくありません。
今回は不倫の慰謝料を請求する際に裁判外の交渉を行うメリットとデメリット、裁判外の交渉を行うべき場面について解説します。
配偶者に不倫されてお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
- 配偶者に不倫されてお困りの方
裁判外の交渉とは
裁判外の交渉とは、裁判所を介さずに直接相手に慰謝料を請求し、話合いで解決することを目指す方法です。
夫や妻に不倫されたら、不倫相手に慰謝料請求をしたい方が多いでしょう。
そういったケースでは、まずは不倫相手に慰謝料請求の連絡を行い、不倫相手と話し合って慰謝料の金額や支払方法を決めます。これが裁判外の交渉です。
不倫の慰謝料事件が裁判外の交渉によって解決されることも少なくありません。
裁判外の交渉は、典型的な不倫慰謝料の請求方法といえるでしょう。
裁判外の交渉の流れ
裁判外の交渉は以下のような流れで進めます。
相手に内容証明郵便で慰謝料の請求書を送る
まずは不倫相手に対し、慰謝料の請求を行います。
請求方法に特別なルールはありませんが、一般的には「内容証明郵便」を使うケースが多数です。内容証明郵便とは、郵便物の内容が記録として残る郵便です。
「配達証明」をつけておけば、いつ相手に配達されたかもわかって便利です。
不倫相手にのみ慰謝料請求することもできますし、配偶者と不倫相手の両方に慰謝料請求をしてもかまいません。
相手と交渉する
慰謝料の請求を送ったら、相手との交渉を開始します。
話合いにより、慰謝料の支払金額や支払方法を取り決めます。
裁判外の交渉の場合、配偶者と不倫相手の接触禁止や違約金、秘密保持などの約束をすることもできます。
合意書を作成する
慰謝料の金額や支払方法、その他の条件面について合意ができたら合意書を作成しましょう。
口約束では守られない可能性が高くなるので、合意内容は必ず書面化すべきです。
合意書を公正証書にする
特に慰謝料が分割払いになる場合などには、合意書を「公正証書」にしましょう。
公正証書を作成しておけば、相手が不払いを起こしたときにすぐに相手の給料や預貯金を差し押さえられて便利だからです。
ただし、公正証書の作成は強要できません。相手が渋る場合には説得して協力させる必要があります。
慰謝料の支払を受ける
合意書ができたら、後は約束通りに支払を受けるだけです。多くの場合には慰謝料の支払方法は銀行振込となるので、入金があるかどうかをきちんとチェックしましょう。
支払があれば、裁判外の交渉による慰謝料の請求手続は完了します。
裁判外の交渉のメリット
民事裁判と比較したときの裁判外の交渉のメリットは以下のとおりです。
早期解決を期待できる
民事裁判をすると、一般的に半年以上の時間がかかってしまいます。
ですが、「もっと早く解決したい」と考える方が多いでしょう。
裁判外の交渉なら、内容証明郵便を送って話し合うだけなので、1か月程度で解決できる可能性もあります。
早めに解決できる可能性があるのは、裁判外の交渉の大きなメリットといえるでしょう。
ただし、裁判外の交渉であっても長引くケースはあります。たとえば相手が請求を無視する場合や条件面で折り合わずにもめた場合、相手の返答が遅い場合などです。
コストがかからない
民事裁判をすると、多大なコストが発生します。
時間も労力もかかりますし、弁護士費用なども高額になるでしょう。
それに対し、裁判外の交渉は低コストです。
期間も短く済む可能性が高いですし、労力もかかりません。
自分で交渉すれば弁護士費用がかかりませんし、裁判費用も発生しません。
弁護士に依頼しても、民事裁判にならずにすめば、民事裁判になった場合よりも費用が安くすむことがあります。
コストがかからないのは裁判外の交渉の大きなメリットといえるでしょう。
精神的負担が小さい
民事裁判を起こすと、当事者の方には大きなストレスがかかるものです。
たとえば、相手から攻撃的な内容の準備書面が提出されると、読後に非常に感情的になってしまったり混乱したりする方が少なくありません。
裁判外の交渉であれば、攻撃的な準備書面を読む必要はありません。
できるだけストレスを抱えたくないという方には民事裁判より裁判外の交渉をおすすめします。
尋問を受けなくて良い
民事裁判を起こすと、当事者の方に対して尋問が行われる可能性があります。
尋問の日には裁判所へ行かねばなりませんし、裁判所では相手方の弁護士からもあれこれ聞かれる可能性もあります。
尋問がプレッシャーとなり、苦痛に感じる方も多数おられます。
裁判外の交渉であれば、こういった尋問を受ける必要がありません。
裁判よりも増額できる可能性がある
不倫の慰謝料には「相場の金額」があり、民事裁判で請求する場合、相場の金額を大幅に超えるのは困難です。
一方、裁判外の交渉であれば自由に慰謝料の金額を定められるので、相場を大幅に上回る金額を定めることも可能です。
慰謝料の相場にとらわれずに高額な慰謝料を請求できる可能性があることも裁判外の交渉のメリットといえるでしょう。
金銭以外の条件を付けることができる
民事裁判で慰謝料請求するときには、慰謝料の支払を命ずる判決が出るだけです。
他に細かい条件をつけることはできません。
その一方で、裁判外で慰謝料請求をするときには、以下のような条項をつけられます。
接触禁止条項
不倫相手と配偶者が接触するのを禁止する条項です。
今後、不倫関係が復活するのを防ぐ目的で入れます。
違約金の条項
接触禁止条項に違反した場合などに、相手に違約金を払わせる条項です。違約金を定めておけば、相手が約束を破ったときに支払を受けやすくなります。
また相手には「違約金を払いたくない」という気持ちが生まれるので、約束を守らせやすくする効果もあります。
秘密保持の条項
不倫トラブルは、できれば他人に知られたくないものです。裁判外の交渉であれば、お互いに第三者へ不倫トラブルを口外しないという秘密保持の条項を入れられます。
求償権行使を禁止する条項
不倫相手に慰謝料請求をすると「求償権」を行使されるケースがあります。求償権とは、不倫相手が慰謝料を払った時に、交際相手である配偶者に対し、本来はその配偶者が支払うべきであった部分を請求することができる権利です。不倫があっても離婚しない場合には、求償権を行使されてしまうと、せっかく不倫相手に慰謝料を支払わせても配偶者を通じて取り戻されてしまうのです。それでは慰謝料請求した意味が半減するでしょう。
裁判外の交渉であれば、求償権を放棄させることができます。
裁判外の交渉のデメリット
裁判外の交渉には以下のようなデメリットもあります。
相手が応じない場合がある
裁判外で慰謝料の支払を受けるには、相手と交渉をした上で合意しなければなりません。相手が交渉に応じない場合には、慰謝料の支払を受けることはできません。
条件的に折り合わない可能性がある
話合いはできたとしても、相手との間で条件的に折り合わないケースがあります。
たとえば、相手が「30万円しか払わない」と言ってきたとき、こちらがその金額に納得しなければ、裁判外の交渉によって希望する額の慰謝料の支払を受けることはできません。
示談・和解が成立しなければ裁判の可能性がある
裁判外の交渉は、示談・和解が成立してはじめて支払を受けられる手続です。
示談・和解できなければ裁判せざるを得なくなります。
強制執行ができない
裁判外の交渉で示談・和解しただけでは、相手が支払をしないときに強制執行(差押え)ができません。差押えによって慰謝料を回収するには、慰謝料支払の合意を公正証書にしておく必要があります。
ただ、公正証書作成のためには相手の協力を得る必要があります。相手が拒否するなら公正証書作成はできません。
裁判外の交渉の場合、最終的に強制執行ができない不安定な状態になってしまう可能性があります。
まとめ
不倫慰謝料の請求をするなら、まずは裁判外の交渉をするのがおすすめです。弁護士が交渉を代行すると、有利に解決しやすくなるものです。群馬の山本総合法律事務所では不倫慰謝料請求に力を入れて取り組んでいますので、配偶者に不倫されてお困りの場合にはお気軽にご相談ください。
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