慰謝料請求と離婚のタイミング～どちらを先行させるべき？～

夫や妻が不倫したら、慰謝料請求や離婚を考えるものです。その場合、離婚と慰謝料請求をそれぞれ「いつのタイミングで行うべきか」を考えておかねばなりません。

離婚を先行させる順番も慰謝料請求を先行させる順番も、それぞれメリットとデメリットがあります。

今回は不倫の慰謝料請求と離婚のタイミング、どちらを先行させるべきかについて、弁護士が解説します。

配偶者に不倫されて離婚や慰謝料請求を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

慰謝料請求と離婚の順番の3パターン

配偶者に浮気されたために離婚しようと考えていて慰謝料請求もしたい場合、それぞれのタイミングについては以下の3パターンがあります。

離婚を先行させる

まずは配偶者との離婚問題を終えてから不倫相手に慰謝料請求するパターンです。離婚後に不倫相手と交渉して慰謝料を払わせる必要があります。

慰謝料請求を先行させる

まずは不倫相手へ慰謝料請求をした上で、解決してから離婚するパターンです。離婚を迷っている場合などには良い選択肢となるでしょう。

同時に進める

離婚と慰謝料請求を同時に進めるパターンです。離婚と慰謝料問題の両方に対応しなければならないので労力がかかりますが、一回で紛争を解決できるメリットがあります。

 

以下ではそれぞれのパターンにおけるメリットとデメリットをみていきましょう。

離婚を先行させる場合のメリット

まずは離婚を先行させてから慰謝料請求を後で行うメリットです。

慰謝料が高額になりやすい

離婚を先行させると、不倫慰謝料が高額になる可能性が高まります。不倫の慰謝料相場は、不貞行為によって、離婚に至った場合に高額になるからです。したがって、離婚を先行させると、高額な慰謝料を払ってもらいやすいメリットがあります。

ただし離婚した後で慰謝料請求するとしても「不倫と離婚の因果関係が薄いケース」では慰謝料の金額は高くなりません。たとえばすでに夫婦関係が相当悪化している状態で不倫が行われて離婚した場合などには、不倫だけが原因で離婚に至ったわけではなく、慰謝料は低額になる傾向があります。

慰謝料が高額になるのは、「不倫が始まる前の夫婦関係が円満で何の問題もなかったケース」などです。

過度な負担がかかりにくい

離婚と慰謝料請求を同時に行うと、請求者には大変な労力がかかります。

配偶者と不倫相手の両方と話をしなければなりませんし、離婚条件の設定や慰謝料の金額の取り決めの両方に対応しなければなりません。

日常生活を送りながら離婚問題と慰謝料問題の両方を抱えると過度な負担となってしまうおそれがあります。

先に離婚をしてから慰謝料を後から請求する場合、1つ1つの問題に順番に取り組めるので負担が大きくなりにくいのはメリットとなるでしょう。

離婚を先行させる場合の注意点・デメリット

次に離婚を先行させる場合のデメリットや注意点をみてみましょう。

時効で慰謝料請求できなくなる可能性がある

不倫の慰謝料請求権には「時効」があります。時効が成立したら、慰謝料は請求できなくなってしまいます。

不倫慰謝料請求権の時効は以下の期間が経過したときに成立します。

• 不倫相手と不倫の事実を知ってから3年間
• 不倫があってから20年間

離婚を先に進めることにして後から慰謝料請求する場合、慰謝料請求権が時効にかかってしまいやすくなります。特に離婚トラブルの解決に1年や2年などの時間がかかると、慰謝料請求にかけられる時間がほとんど残らない可能性も懸念されます。

離婚を先行させる場合には、常に不倫慰謝料の請求権についての時効を意識しましょう。もしも時効が成立しそうになったら、早めに慰謝料請求に取り掛かるべきです。

不倫相手の行方や勤務先などの情報を得にくくなる

先に離婚を先行させて不倫相手を無視していると、不倫相手の生活状況が変わってしまう可能性があります。

たとえば不倫相手が引っ越しをしたせいで住所がわからなくなったり、電話やメールアドレスを変えたので連絡先が不明になったり、あるいは転職したせいで勤務先がわからなくなったりするケースも少なくありません。

相手の居場所がわからなければ、そもそも慰謝料請求が難しくなります。勤務先がわからなければいざというときの給料差し押さえの手続が煩雑になります。

現在把握している情報を活かすためには、早めに慰謝料請求した方がよいでしょう。

配偶者が非協力的になる可能性

不倫が発覚した当初は配偶者における記憶も新鮮です。

「申し訳ない」という気持ちから、不倫相手に対する慰謝料請求に協力してくれるケースが少なくありません。

ところが先に離婚を先行させてトラブルになったり、不倫から時間が経過してしまったりすると、配偶者が非協力的になるケースも多々あります。

配偶者が不倫の慰謝料請求に協力的な姿勢を見せているなら、早めに慰謝料請求した方が良いでしょう。

二度手間になる

先に離婚をしてから後に慰謝料請求すると、離婚問題が決着したうえで慰謝料問題に対応しなければなりません。

トラブルを一回で解決できず、二度手間になってしまうデメリットがあります。

先に慰謝料請求するメリット

次に先に慰謝料請求するメリットをみてみましょう。

離婚を迷っていても対応しやすい

1つ目のメリットは、離婚を迷っていても対応しやすいことです。

配偶者に不倫されても必ず離婚するとは限りません。迷っている場合、悩んでいるだけでは前進できません。離婚するかどうか迷っていても、とりあえず慰謝料請求するだけなら対応できます。迷っていても前に進めるのはメリットの1つといえます。

過度な負担がかかりにくい

まずは不倫慰謝料を請求してその後に離婚する場合、手続きを1つ1つ進められるので請求者に負担がかかりにくくなります。

同時に2つの請求を行う場合と比べると時間はかかっても労力がかかりにくいメリットがあるでしょう。

配偶者に協力してもらいやすい

離婚せずに慰謝料請求を先に行う場合、配偶者による協力を得やすいメリットがあります。

特に配偶者が「離婚したくない」と考えている場合、全面的な協力を得られる可能性もあります。

離婚を避けられる可能性もある

当初は「不倫慰謝料請求をしてから離婚しよう」と考えていても、慰謝料請求を進める中で考えや状況が変わる可能性があります。

配偶者との関係が修復され、離婚を避けられる可能性があるのもメリットとなるでしょう。

先に慰謝料請求するデメリット

先に慰謝料請求してから離婚する場合のメリットは以下のとおりです。

慰謝料が低額になる可能性がある

慰謝料請求を先行させると離婚が成立していないため、金額が低額になる可能性があります。不倫があっても夫婦関係が破綻しなかった場合、慰謝料の相場が下がるからです。

夫婦関係が悪化したとしても「離婚した」のと「単に関係が悪化した、別居した」というのでは評価が異なってきます。

慰謝料が低額になる可能性がある点は慰謝料請求を先行させるデメリットとなるでしょう。

離婚トラブルに発展するケースがある

慰謝料請求を先行させると、離婚トラブルに発展する可能性があります。

不倫相手に慰謝料請求されたことで配偶者の中で「離婚への踏ん切り」がつき、離婚を求められたり家出されたりするケースがあるのです。

離婚を迷っているときに慰謝料請求すると、離婚に突き進んでしまう可能性もあるので、慎重な検討が必要といえるでしょう。

二度手間になる

先に慰謝料請求してから後に離婚手続きを行う場合、紛争を1回で解決できずに二度手間になるデメリットがあります。

離婚と慰謝料請求を同時に行う場合のメリット

離婚と慰謝料請求を同時に行うと、以下のようなメリットがあります。

慰謝料が高額になりやすい

離婚と慰謝料請求を同時に行う場合、客観的にも夫婦関係の破綻が明らかになりやすいものです。

不倫によって夫婦関係が破綻した因果関係を証明しやすいので、慰謝料が高額になりやすいのはメリットとなります。

トラブルを1回で解決できる

離婚と慰謝料問題を同時に解決すると、トラブルを後に残しません。

離婚調停でも不倫相手と配偶者の両方を相手方にできますし、離婚訴訟でも不倫相手と配偶者の両方を被告（訴えられた人）にできます。

トラブルを1回で解決できるのは大きなメリットとなるでしょう。

離婚と慰謝料請求を同時に行う場合のデメリット

離婚と慰謝料請求を同時に行うと、以下のようなデメリットもあります。

負担が大きくなる

離婚問題と慰謝料問題の両方を抱えると、請求者にかかる負担が大きくなります。配偶者とも話し合わねばなりませんし、不倫相手とも交渉しなければならないからです。離婚と慰謝料請求を同時に行うと、過度な負担がかかる可能性がある点はデメリットといえるでしょう。

負担を少しでも減らすには、弁護士に対応を依頼しましょう。弁護士が離婚と慰謝料問題の両方の代理人になれば、ご本人が直接配偶者や不倫相手と連絡を取る必要がありません。軽い負荷により離婚と慰謝料問題を一回的に解決できるメリットがあります。

配偶者が協力してくれない可能性がある

離婚と慰謝料請求を同時に行うと、配偶者と対立した状態で慰謝料請求を進める構図になってしまいます。そうなると、配偶者が不倫相手に対する慰謝料請求に協力することは期待しにくくなるでしょう。

ただし話の進め方によっては配偶者の協力を得ながら離婚と不倫慰謝料請求の両方を進められるケースもあります。たとえば不倫相手の情報を教えてもらう代わりに離婚条件を多少配偶者の希望に叶うよう提示する場合などです。

離婚交渉の方法については専門的な知識、経験がものをいいますので、迷われたら弁護士までご相談ください。

慰謝料請求のベストなタイミング

慰謝料請求するのにベストなタイミングをパターンごとにまとめました。

離婚する場合

離婚前または離婚と同時がおすすめです。

この方が慰謝料の金額が高額になりやすいからです。また慰謝料請求を遅らせると不倫相手が行方不明になったり時効が成立したりするリスクも高まります。

離婚を迷っている場合

離婚前に慰謝料請求するのがおすすめです。

慰謝料請求をしている間に気持ちが固まるケースも多いですし、慰謝料請求に対する配偶者の対応次第で状況が変化していく可能性もあるためです。

離婚しない場合

証拠を入手したらすぐにでも慰謝料請求を検討するようおすすめします。

1つには、不倫相手に慰謝料を払わせれば自分の中で気持ちの整理がしやすいメリットを挙げられます。また不倫相手との合意時に、配偶者との接触禁止条項をつけるなどして別れさせるための対応も可能だからです。

群馬の山本総合法律事務所では、不倫の慰謝料問題に積極的に取り組んでいます。

離婚や慰謝料請求のタイミングに迷われているなら、一度お気軽にご相談ください。